邦秋の、ギャラリー「個と場」

宮崎在住のランチタイムミュージシャン、邦秋(くにあき)の頭の中。アイデア備忘録・雑感・お役立ち情報から創作活動(音楽・歌詞・散文詩等)の展示・解説まで幅広く。関心事:DTM・音楽・ロゴ・デザイン・教育・APPLE・効率化他

20190426 プロフェッショナルに憧れを抱かせるというキャリア教育(提案)

先日、小学校向けキャリア教育用副教材の完成を記念し、掲載企業からの参加として、その教材の児童への贈呈式に出席して参りました。

 

その教材(冊子)は、様々な業種について、それぞれを代表する企業・団体(以下、「企業」)を一社取り上げて紹介するものです。

 

当日は、贈呈式に加え、キャリア教育の授業の一環として、式典に参加した企業がそれぞれ3分ずつ仕事の紹介をする、という機会も設けられました。

 

こうして、小学生のうちから様々な仕事を知る機会は素晴らしいことだと思いますし、この教材作成を企画制作された印刷会社さんの教育への意識の高さは地域の誇りでもあります。

 

そんな中、私は、いつもの悪い癖でこの企画をさらに充実させるにはどうすればいいか、を考えていました。

 

 

私が導き出したその答えは、この教材及び3分間スピーチを「業種の紹介」ではなく、「地域のプロフェッショナルを知る」ことに注力した「職種の紹介」にシフトするというものです。

 

以下、3分間スピーチの方に特化して論を進めてまいります。

 

 

例えば印刷会社の場合、今回のように業種の紹介ですと、児童に対しては仕事の内容を以下のとおり簡潔に伝えることとなります。

  

「○○印刷から来ました△△と申します。印刷会社には、デザイナー、UI/UX/ウェブデザイナー、印刷担当など、様々な職種の人がいます。

印刷会社と言えば、冊子やポスター、包装紙や商品パッケージをデザインして印刷をするだけ、というイメージがあるかもしれませんが、私たちの会社では、パソコンやスマートフォンで見るウェブサイトを作ることもできます…」と会社でできることの説明をしがちではないかと察します。

 

もちろん、会社の説明としては大変丁寧なのように感じるのですが、敢えてその中の一つの職種をピックアップして、プロの働き方を紹介してあげるのです。 

 

「私は○○印刷の△△と申します。私の仕事は、DTPデザイナーといって、主に冊子やポスター、包装紙や商品パッケージのデザインをしています。

私は、物を売る上で最も大切なことの一つとして、『良いデザインであること』が挙げられると考えています。

例えば、ここにA・Bという二つの菓子折の箱があります。皆さんはAとBのどちらを手に取りますか?

多くの方がAを選びましたね。私は皆さんがそうなることをわかっていました。なぜなら、皆さんがAを選ぶように私がデザインをしたからです。

中身のお菓子が美味しいことも勿論大切ですが、それをお客様が手に取ってくださるか、食べてもらって「美味しい」と言ってもらえるかどうか。そんなお菓子の運命を、パッケージデザインが背負っているとも言えるのです。

なぜなら、実は、AとBは中身が全く同じお菓子だからです。

デザインは、ただ楽しそうに色を塗ったり文字を書いたりするだけではありません。

赤を選ぶかオレンジ色を選ぶか、文字を太くするか細くするか、紙の素材はツヤツヤしたものがいいかそうでないか…こうした細かいところ1つ1つについて、見た人がどう感じて、どう行動するかを考えながら決めていきます…」(509字 約1分半)

 

こんな滑り出しで話を始めれば、「プロのデザイナーって、こういう視点で仕事をしているんだ!」という発見と共に、将来の夢を描く上での憧れの対象とする方も出てくると思いませんか?

 

 

例えば、銀行の場合。業種の紹介ですと、説明はこのように始まります。

 

「○○銀行から来ました△△と申します。銀行は、簡単に述べると、お金を貸すところ、そしてお金を預かる仕事です。

お金は自分で持っておくと紛失のリスクがありますが、銀行でお預かりすることで、安全に管理することができます。

また、最近ではお金をお預かりして増やす努力をする『投資信託』や保険を取り扱うなど、様々な形で地域の会社・お店、そして一人一人の生活に役立つ仕事をしています…」

 

こちらも銀行という職場の業務内容をわかりやすく伝えてはいますが、そう聞いたところで、小学生に「私はお金を預かったり貸したりする仕事に就きたい!」と思っていただくのは難しいように思います。

 

 

そうでなく、登場する人が次のように自分自身のプロの仕事を紹介するのです。

 

「私は○○銀行の△△と申します。私の仕事は、地域の会社やお店に対して、お金をお貸しする仕事をしています。

貸したお金を返していただく際に、「利息」というお金を足していただくことで、○○銀行は儲かることできます。

地域には様々な銀行がありますが、その中でも○○銀行からお金を借りていただくために、私はお客様である会社やお店のことを一から勉強して、どうしたらよりよい会社・よりよいお店になれるかを、社長さんや店長さんと一緒に考えます。

私は現在20件のお客様とお付き合いがあるので、20種類の業界・会社・お店についてたくさん勉強をしなければなりません。それはまるで、それぞれの会社やお店の一員となったような感覚にさえなるほどです。

もちろんそうして様々な職場のことを深く考えるのは簡単ではありませんが、社長さん・店長さんが私を頼ってくださり、『△△さんのところでお金を借りよう!』と決断していただける喜びを感じられる仕事です。例えば…」(408字・1分10秒程度)

 

このように話せば、児童が「銀行で働くこの人は、社長さんや店長さんという偉い人に頼られる仕事をしているんだ」という印象を抱くのではないでしょうか。

 

 

以上、全て私の妄想で語ってしまいましたので、デザイナーや銀行員の方からすると「何を言ってるんだ!」と飽きられる内容を綴ってしまったかもしれませんが、キャリア教育の理想の形として、意図したことだけでも伝われば幸いです。

 

プロフェッショナル本人から語って頂くのが理想的ですが、人前で話すことが苦手という方もいらっしゃるでしょうから、そういった場合は社内の上手な方が十分ヒアリングをした上で、代弁する方が効果的になりえることもあるでしょう。

 

 

ポイントは、ざっくりとした職場紹介ではなく、一人一人のプロが、日頃から何を考えて、何を努力して、何を成しているか。

その具体的な姿を提示して、子どもたちにたくさんの「憧れ像」を提示することが、より実質的なキャリア教育になるのではないかな、と思った次第です。

そのエッセンスを、冊子にも反映出来ればなお素晴らしいと思います。

 

キーワードは、「プロフェッショナル」です。