邦秋の、ギャラリー「個と場」

宮崎在住のランチタイムミュージシャン、邦秋(くにあき)の頭の中。アイデア備忘録・雑感・お役立ち情報から創作活動(音楽・歌詞・散文詩等)の展示・解説まで幅広く。関心事:DTM・音楽・ロゴ・デザイン・教育・APPLE・効率化他

20190613 『愛のprisoner』を描き続ける作詞家・稲葉浩志

B'z LIVE-GYM 2019 Whole Lotta NEW LOVE鹿児島公演参戦の余韻を引きずっている私。

 

そんな中、作詞家・稲葉浩志について、以前からぼんやりと考えていたことを書き起こしてみようかと思います。

 

稲葉さんの歌詞を並べてみると、ところどころに同じテーマやキーワードが登場します。

それは、「人は(相手の)全てのことを知ることはできない」「でも、真実を知りたい」「だから、疑ってしまう」というものです。

 

※以下、完全に個人の見解です※ 

そのストーリーは、「SURVIVE」の「DEEP KISS」から始まる。

ここで描かれている主人公は、彼女にずっと嘘をつかれながら浮気をされており、大変大きなショックを受けた。

以降、彼は、ダメージを引きずり続け、稲葉浩志の詞作品にてしばしば描かれることになる…

 

 

そんな妄想を前提にすると、様々な作品同士で、ストーリーと感情のバトンが繋がっていきます。

例えば… 

 

 予想通りあの娘は逃げちゃったいっさいがっさい持ってかれました

 やはり現実は渋い わかってる、わかってるって、ハヤかったり、

 ヘタクソだったり、 やたら気がきかなかったり、そりゃ他の男でもできるわ

 (「DEEP KISS」より)

 

ここで受けたショックから、「知りたい欲」に駆られ、相手を疑ってしまう人生がスタート。

  

 うたぐり深いやつになっちゃったのは 週刊誌のせいじゃない オマエのせいでしょ

 でも真実を知ることがすべてじゃない

 (「Liar! Liar!」より)

 

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続く、Al「Brotherhood」でも、このショックは続きます。

 

 恋におちていけば 疑心暗鬼 被害妄想

 あらぬ想像だけがふくらんでって そのうちはじける(中略)

 ひろがるウワサに 人生をコントロールされて

 なにも確かめないで 誤解のまま戦争する気かい?

 (「その手で触れてごらん」より)

 

「戦争」という言葉の選択に、稲葉さんの抱える並々ならぬ感情が感じとれます。

後述の「雨だれぶるーず」にも「大量破壊兵器」という表現が出ますが、こうした語彙が登場する一定の「モード」があるのでしょうか。

 

さて、この流れで同アルバム収録のヒット曲「ギリギリchop」を読むと、傷ついた自分を奮い立たせる曲のようにも聞こえてきます。

 

 ギリギリ崖の上を行くようにフラフラしたっていいじゃないかよ

 それでも前に行くしかないんだから 大丈夫 僕の場合は。

 (「ギリギリchop」より)

 

 

 

次にリリースされるAl「ELEVEN」の序盤は、愛に縛られる世界観が全開です。

 

 失態を繰り返すこんな愚か者には

 去りゆく人をとめる力は もうまるで残っていない(中略)

 嘘でもいい聞かせてくれ 本気で僕と生きていたと

 信じるくらいいいだろう

 (「信じるくらいいいだろう」より)

 

 あなたのどこを念入りに探しても僕を受け入れる場所ないでしょう(中略)

 あなたのもとを去れない永遠に ほんのちょっとの愛 そんなの欲しがって

 痛い目にあうと 知ってて追いかける ほんのちょっとの愛 そんなんとひきかえに

 絶ち切れぬ鎖につながれた愛のプリズナ

 (「愛のprisoner」より)

 

 

 

その後、しばらくこの手のテーマは影を潜めますが、Al「THE CIRCLE」の爽やかな楽曲「アクアブルー」では、珍しく相手の女性側からの視点で描かれています。 

 

 わたしのことを どれだけ知ってるの 言ってみてよ 聞かせてみてよ(中略)

 あなたが部屋をノックしてる頃 わたしは誰かの腕の中に

 (「アクアブルー」より)

 

また、同Al収録の「BLACK AND WHITE」は、「彼」の悩みが全面的に表れています。

 

 「白黒つけたいんだ 灰色はいらない 勝ち負けを知りたいんだ 引き分けもいらん」

 永遠に続く悩みのリングさ 哀しいBLACK AND WHITE(中略)

 永遠に続く憂いの理由は 自分自身だと最期まで気づかないまま 

 (「BLACK AND WHITE」より) 

 

 

 

次作Al「MONSTER」においても、包み隠さずに心の叫びを収めた大作があります。

 

 夕べ誰とどこまで行って どんな楽しいことしてたの?

 ああ 知りたい いや 知りたくない

 あるのかないのか まだはっきりしない確たる証拠を求めて

 始まります 疑惑の大暴走(中略)

 恋の炎は 消えたはずなのに 知らない横顔見せられ またいやらしく燃えてくる

 今さらそんな権利も甲斐性もないのに 裏切りを許せない 馬鹿だろ(中略)

 何がおきているのか てんでわかっちゃいねえ

 さがしてるものは どこにあるの ほんとは何も 見つからないで欲しい

 (「雨だれぶるーず」より)

 

 

 

「BLACK AND WHITE」「雨だれぶるーず」は、曲調も重くずっしりとした作品でした。

ここがピークだったように思いますが、以降の作品でも、女性絡みや嫉妬等を抜きにしてもチョコチョコと冒頭に述べたキーワードが散見されます。

 

 じんわり確実に今日も宇宙は膨らんで、キミとの間も離れてゆく

 がっかりしてるに決まっている 勝手に想い さらに離れる(中略)

 ただ呆然と失うのはイヤ ボクはもっとキミを知りたい

 (Al「MAGIC」収録 「TIme Flies」より)

 

 すべて知るのは到底無理なのに僕らはどうして

 あくまでなんでも征服したがるカンペキを追い求め

 愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに

 (Al「MAGIC」収録 「イチブトゼンブ」より)

 

 明かりの下に集まったなら 笑い語り合う仲間

 でもきっと誰も 互いのことをわかりあうのは不可能

 人はバラバラな生き物それを忘れちゃいけない 

 (Al「MAGIC」収録 「MY LONELY TOWN」より)

 

 すべてを知ることなんてできないよ だから 目を閉じて祈る

 (稲葉浩志ソロAl「Hadou」収録 「赤い糸」より)

 

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そして、令和元年。

ついに「彼」はその殻を破ることが出来ました。

それが、Al「NEW LOVE」に収録の「マイニューラブ」。

 

いくら思いが強かろうと良い塩梅に愛されない

現実を知った朝のSunlights 骨身に沁みて痛い(中略)

 

新しい恋のようなもの見つけに行こうよ

愛しすぎちゃったあの人はもう戻っては来ない

正解は他にあるマイ・ニュー・ラブ (中略)

 

愛しすぎちゃったらそれはもう愛じゃなくなる

学んで目線変えてマイ・ニュー・ラブ(中略)

 

愛しすぎちゃうのと幸せはまた違うこと

正解はきっとあるマイ・ニュー・ラブ

(「マイニューラブ」より)

 

過去を振り返りつつも、ついにそれを振り払って、新たな愛を見つけることになりました!

時代も変わり、いよいよ心機一転!

 

…かと思いきや、同Alにてこんなことを嘆いています。

 

恋の滓(かす)がまだ残っている

辛いくらいに溜まっている

いつになったらこの俺は太陽まで飛んでいけるの

冷たい魔法を解いておくれ

(「恋鴉」より)

 

やはり、「彼」はまだダメージをひきずっているようです…。

 

 

日本において圧倒的な人気を誇るB'z。

歌唱力、演奏力、ビジュアルなど様々な「強さ」を持ち合わせ、「完璧」といっても過言ではないユニットでありながら、歌詞から見え隠れする男の「弱さ」を伴っていることが、人を惹きつける要因の一つになっているかもしれません。

 

以上、あくまで完全に個人的な妄想に基づく稲葉さんの歌詞紹介でした。

 

 

 

追記:

もう一つ、稲葉さんらしい歌詞として私が思い浮かぶのは「皆にいい顔して好かれようとしている男」の描写です。

こちらも時々顔を出す傾向にあり、最新Al「NEW LOVE」の「Da La Da Da」でも登場しました。

 

「らしさ」が滲み出る詞作品。だから言葉は面白いのです。

 

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