茶色の煉瓦風のタイルを纏ったビルがあり
その外壁を遮るように畳まれた垂れ幕がある
駅前の風景を一枚の写真に収めた時に
垂れ幕が描いたその波線一つで街が死んだように見えた
何を正しいと呼び、何を間違いだと叫ぶかは人それぞれだが
この写真では、この街が呼吸しているという事実が
伝わらないことは確かである
そう思い、写真の世界においては
垂れ幕が無かったことにすることとした
垂れ幕の周りのタイルを選択し、コピーして
煉瓦模様が連続するよう垂れ幕の上にコピーした煉瓦を貼り付ける
選択範囲の中には十二個の煉瓦があり
その枠の中の右上の煉瓦に照準を合わせ、模様を繋げていく
あたかも垂れ幕が無かったかのように
隣り合った煉瓦が連続の模様をなすことができた
できたと思っていた
しかし、二段下の煉瓦の継ぎ目には不自然な段差が生まれていた
その下も、その下も、段差は明らかに大きくなっていた
何の変哲もない連続に見えるその煉瓦
その一瞬に、一段一段、一つ一つが生み出す
固有の形、角度、色合いは
他のどれとも同じではなく
周りの風景の流用によって誤魔化すことを簡単には許さない
それが人口構造物の風景であっても、である