「しまった…。昨日イライラし過ぎて、あいつの悪口を投稿してしまった」
「本当? それは取り返しのつかないことをしたわね」
「あぁ。あいつのこと、嫌いなわけじゃないのに、こんな言い方されてしまうと、何も知らない人が見たらあいつがすごく嫌な奴に見えてしまうな」
「それを投稿したあなたもね」
「確かにそうだ」
「令和が始まった頃だったら取り返しがついたかもしれないのにね」
「どういうことだ?」
「あの頃は、まだインターネットの中ががとても自由な時代で、投稿したことが自由に消せたのよ」
「まさか、そんなことしたら、嘘やデタラメを好き放題言えたってこと? 人を陥れることだって簡単にできちゃうじゃないか」
「そのまさかよ。だから、コンビニの店員が冷凍庫に入った動画が投稿されたり、話題になった犯罪の容疑者として全く無関係の一般人の写真と名前が広まったりしたわ」
「おいおい、なんて酷い時代だったんだ。今、俺は確かにあいつへの悪口を取り消したいけど、そんな時代には恐ろしくて戻りたくないな」
「今は一度発信したことを取り消せないのが当たり前だけどね。あの頃の人々は思いつきや悪ノリで何でも発信するのが普通だったのよ」
「まるで凶器を所持する規制がない古代みたいな世の中だな」
これが、「昨日の願い事」が叶った後の、20年後の理想の姿。