「働き方改革」の話題になるとネガティブな反応を示す方が少なからずいらっしゃいます。
それが、経営者だけでなく労働者側にも存在しているところに、この改革の課題があると言えるでしょう。
その要因の一つとして、本改革の中でも特に目立つ施策である「有休5日取得義務」のように、休むことを強制されているという点が、労働者に課せられた状況とマッチしていないからだと考えています。
私が思う働き方改革のポイントは、いかに休むかという点ではなく、圧倒的な効率化によっていかに生産性を向上できるかです。
手書き文書を電子化したり、エクセルで管理しているものをデータベース化したり、同じ組織内で重複している仕事は統合したり…そんな工夫のしどころを整理し、実行するだけでも随分と変わってくるはずです。
そんな「働き方改革」という名のもとに行う取組としては、例えば…
- IT導入補助金のさらなる強化
- 業務上の無駄を削減するアドバイザーの養成
- 上記アドバイザーの派遣による各組織・企業の無駄の徹底的な排除
- 行政が民間に求める業務の手続きの簡素化(所謂「指名願い」等の事務) など
以上のような、文字通り「働き方」に注力した取組に注力したほうが良いと思います。
例の最後に挙げた「行政が民間に求める業務の手続きの簡素化」については、一提案を過去記事でもお示ししておりますので、よろしければご覧ください。
また、有給休暇取得推進(義務化)や勤務間インターバル制度の導入も、働き手の心身の健康には必要なことですが、これらを「働き方改革」という名のもとで行うと、どうしてもアレルギー反応が出てしまう人がいるでしょう。
「働き方改革」の施策として休むことを強制すると、働く意欲が削がれると感じるからです。
そこで、これらの施策は「休み方改革」と名を替えて、休みたいときにしっかりと休める文化を育成する方が現実的であるように感じます。
そして、その「休み方改革」にはまだ国が取り組んでいない重要な事項があります。
それは、「顧客による発注内容に関する規制」です。
いくら会社側が従業員の働き過ぎを是正しようとしても、その原因の多くは、顧客からの依頼内容(つまり、無茶ぶり)にあり、受注側の従業員はその実現のために無理を強いられているからです。
「他社が新サービス導入するという情報を入手したので、うちとしても超特急で○○のシステムを構築してほしい」
「夏休み商戦に向けて急きょ当施設をリフレッシュしたい。間に合わせてくれ」
このような無理難題に対して、発注側にペナルティが課せられる社会にならないと、どれだけ働き方改革によって生産性を向上しても、休み方改革は達成しません。
むしろ、受注側の生産性向上を喜んだ顧客が、よりハードルの高い依頼をぶつけてくるまでです。
押し寄せてくる無茶ぶりの波に対し、「働き方改革」の名のもとで「休め、休め」と言われても、現実は「そうは言っても休んでは顧客に迷惑をかける」という思いが勝り、サービス残業が拡大する一方。
そうではなく、適正な仕事量を、適正な人員で回せる仕組みづくりをしっかりと作っていくべきであると考えます。
より現場感に寄り添った「改革」が実行されますよう、願うばかりです。