しばらく前の話ですが、お笑い番組で興味深いシーンがありました。
その番組は、「さんまのお笑い向上委員会」。
お笑いコンビ「トム・ブラウン」の布川ひろきさんにTRFのSAMさんのモノマネをさせるべく、スタジオ全員でTRFを歌おうという流れに。
そのとき、全員が「♪寒い〜夜だから〜 ラララララ〜ラララララ〜」と歌ったのです。
確かに私も、「寒い夜だから」に続く歌詞が思い出せません。それでも、「寒い夜だから」は覚えているのです。
私は、常々「メロディに沿った歌詞」の大切さを認識しており、私が作詞をする際も強く意識をしています。
その点で、この歌はサビの歌い出しのメロディに対して「寒い夜だから」という「乗り方」が抜群なのです。このようなフレーズを「パワーフレーズ」と呼びたいと思います。
振り返ると、小室哲哉さんはパワーフレーズの創造に長けていらっしゃるのかもしれません。
TRFだけを見ても、ヒット曲の、
・寒い夜だから…
・Masquerade
・BOY MEETS GIRL
・EZ DO DANCE
・CRAZY GONNA CRAZY 等、
タイトルを見るだけで、その言葉に沿うメロディが浮かびませんか?
オリコンシングル売上ランキングにおいては、「OVERNIGHT SENSATION 〜時代はあなたに委ねてる〜」よりも下位にあたる「寒い夜だから…」。
それでも、布川ひろきさんのモノマネ時の選曲として「OVERNIGHT〜」ではなく「寒い夜だから…」が選ばれたのは、サビの歌い始めやすさ(ただの歌いやすさではなく、歌い始めやすさ)が決め手だったものと思います。
ちなみに、「OVERNIGHT SENSATION 〜時代はあなたに委ねてる〜」のサビの始まりは、"Anyway you want"と歌っているのを、今初めて知りました…。そのくらいの差です。
ところで、先ほど挙げた5曲のうち上から3曲(寒い夜だから…、Masquerade、BOY MEETS GIRL)は、歌い出しからパワーフレーズが登場します。これは、小室哲哉氏が選んだ「売れるための戦略」なのでしょう。
TRF以外にも、小室哲哉さんはタイトルを読むだけでメロディが浮かぶパワーフレーズを数多く生み出しています。
例えば以下の曲名。ただ読み上げるのではなく、ついつい口ずさんでしまいそうです。
・CAN YOU CELEBRATE?
・Body Feels EXIT
・a walk in the park
(安室奈美恵)
・恋しさと せつなさと 心強さと
(篠原涼子 with t.komuro)
本来、本稿は「ナンダカンダ」(藤井隆)や「It's My Life」(Bon Jovi)、「パプリカ」(Foorin)など様々なパワーフレーズを探そうと思っていたのですが、書き進める内に小室哲哉さんのパワーフレーズセンスに気づき、彼の楽曲を中心に取り上げる運びとなりました。
印象に残る曲や、いわゆる「売れる曲」を目指したいときに、私自身も参考にしていきたいと思います。