邦秋の、ギャラリー「個と場」

宮崎在住のランチタイムミュージシャン、邦秋(くにあき)の頭の中。アイデア備忘録・雑感・お役立ち情報から創作活動(音楽・歌詞・散文詩等)の展示・解説まで幅広く。関心事:DTM・音楽・ロゴ・デザイン・教育・APPLE・効率化他

20221008 ザ・ドリフターズ「いい湯だな」に見たさりげなく秀逸な歌詞

ブログ更新が滞っております。

最近、活動の軸を新曲制作とYouTubeでのリリックビデオ公開にシフトしており、そちらのアピールを兼ねてTwitterInstagramでの交流を優先しているため、ブログの執筆にまで手が回っていないのが実状です。

体が二つあれば両立させたいのですが、思うようにはいかないものです。

 

さて、今回は作詞の話。

先日、ひょんなきっかけで、ザ・ドリフターズの「いい湯だな」を聴きました。

私は、フジテレビ「ドリフ大爆笑」のエンディング「いいとこだ」しか知らず、オリジナルをちゃんと聴いたのはそれが初めてのことでした。

若かりし加藤茶さんの「ア ビバ ノノン」の合いの手が思いの外かっこいいな、とか、オリジナルはテンポが遅めなんだな、とか色々と感じながら聴いていたのですが、

不意に耳に飛び込んできたフレーズ、

 

「湯気が天井からポタリと背中に」

 

この歌詞に衝撃を受けました。

短い尺の中に、最大限の情報量と情緒が詰め込まれているためです。

 

これは、「湯気が天井に上がって水滴になり、温泉に浸かっている自分の背中に落ちてきた」というシーンでしょう。

 

本来、湯気は落ちてこないのですが、「天井から」の一言で、「水滴」になったことを表したことにして、ここでは水滴の言葉を省いています。

そして、背中に落ちてくるという情報を伝えるのに、「落ちる」という動詞を使わず「ポタリと」の音に置き換えて、「背中に」で文を切っているのです。

 

なんと巧みなんでしょう。

 

情報の最適化と、情緒の醸成という簡単なようで難しい作業だったと推察します。

 

私だったら、このシチュエーションを描くとして、

 

最悪、

「湯気が天井で水滴になり」

までしか伝えられなかったり、

 

もう少し成長しても、

「天井から水滴が背中に落ちて」

が限界だと思うんです。

 

 

この圧倒的な表現力こそ、作詞の醍醐味だと思いますし、改めて私の目指したい歌詞のあり方に立ち帰るきっかけとなりました。

 

永六輔さん、尊敬します。

20220430 多分、世界一遅いSnow Man "D.D."の歌詞妄想解釈

バラエティ番組「バナナサンド」出演回が面白過ぎて、ジャニーズの9人組グループ「Snow Man」に興味を持ち始めた私。

冠番組「それSnow Manにやらせてください」でしばしばロゴクイズコーナーを設けていることもあり、何かと彼らの動向が気になってきました。

 

そんな中、先日デビュー曲「D.D.」を何気なく聴いていたのですが、サビの歌詞「淘汰の先にある未来へ」という言葉が妙に引っ掛かり、歌詞全体を読んでみたところ思わず涙が出そうになったのです。

 

そこで今日は、ニワカなSnow Manフォロワーである私なりの「D.D.」歌詞妄想解釈を述べていこうと思います。

リリースから2年、きっと世界一遅い企画です。

 

まず、私が思うこの歌詞の主題は次の3点。

  1. なかなかデビューできなかった過去の葛藤
  2. 長い下積みを経て、これから著しい活躍していくぞという決意表明
  3. メジャーデビューまでの8年間支えてくれたファンへの感謝

1・2の通り、前提としてSnow Manはかなり遅咲きのグループであることが重要なポイントとなります。

同期にあたるHey! Say! JUMPや後輩のSexy Zone等に先を越され、Snow Man最年長の深澤さんはメジャーデビューの時点で27歳。随分悔しい思いをしてきたことでしょう。

 

ということで、上記を踏まえながら、私なりの歌詞妄想解釈をご覧ください。

 

 

The time has come D.D. Let’s get started
Come on, Everybody Take you higher!!

(考察)

下積み自体を終え、ついにメジャーデビューという「始まりの時を迎えた」ことを宣言するオープニング。
自分たちが活躍することで、ファンの皆を(幸福の?)高みへ連れて行ってあげる、というメッセージに聴こえます。

 

Dancing Dynamite Oh Dynamite
Hey you… Let me go!!
Hey you… Let me go!!

タイトル「D.D.」は「Dancing Dynamite」の略(ですよね?)。
この歌には、「Dynamite」の他にも「burst」「衝撃」「Bangin’ Bangin’」等、激しい印象を受ける言葉が多く登場します。

それらを通じて、ジャニーズ屈指のダンスグループとして、見る者をダンスで注目させ、大きなインパクトを与えていくぞ!という勢いを感じます。

続く「Let me go!!」。これは、「僕に行かせてくれ」という意味になると思いますが、この場合、hey youの「you」はジャニーズ事務所を指しているかも?と予想。

そろそろ僕たちにもデビューをさせてよ、という思いを前提に読むと、「Hey you」の後の「...」にも深い意味を読み取ろうとしてしまいます。

 

描き続けた Dreaming
焦る Clock hands moving
自分見失う trap trap trap ah

You know 理想と Real?
Strong will never get ill
気がつけなきゃ 次はないね

メジャーデビューを夢見て、レッスンやバックダンサーを頑張り続けた日々。
しかし、時がどれだけ流れても声がかからず、自分を見失ってしまう時期もあったでしょう。

思っていた出世街道と現実が違っていたかもしれないけれど、自分を信じて実力(=Strong)をつけていけばいつか報われると信じて突っ走ってきたのだと思います。

 

No matter what happens in your past
No matter who you are
The thing is How it shines 何色でも…

「あなたがこれまでに何があったのか、あなたが誰なのかは構わない」から始まるこのパートは、やや解釈に困りました。

これから新しくファンになってくれる方に向けて、「どなたでも歓迎!」というメッセージにも聞こえますし、「色」という言葉から「メンバーカラー」を連想すると、メジャーデビュー前年となる2019年に追加加入した3名のことを想って綴られているのかなとも考えました。

 

きっと答えはいつもキミと共にある
Get up, It’s time to burst

この「キミ」はファン。

これから一緒に歩み続けようという声掛けとともに、time to burst=爆発の時間、つまりDancingのDynamiteが弾けることの宣誓の個所でしょう。

 

閉ざされた扉へCloser
この地球(ホシ)の期待超えてけ

「閉ざされた扉」は今まで叶わなかったメジャーデビューの扉でしょうか。

いよいよその扉をこじ開けるために近づくこと(=closer)、そして、いざ開けたからには日本どころか世界中を魅了したいという野望を歌っているのかもしれません。

ダンスに国境はないですから。

 

Keep running to new world
My heart has no rule
進化してゆけ We are…

メジャーという新しい世界に飛び込んでも、自分を小さなルールで縛らず、全員で進化を続けるぞ!と自分たちを鼓舞しているようです。

 

Dancing Dynamite Oh Dynamite Let’s Sing it「LA LA LA」
衝撃をキミの元へ Bangin’ Bangin’ – イイネ!

自分たちの持ち味であるダンスの勢いに合わせて、メジャーの世界で歌える喜びを「LA LA LA」と表しているのではないでしょうか。

そのDynamiteが生み出した「衝撃」を、キミ=ファンに届けたいのでしょうね。

 

Dancing Dynamite Oh Dynamite キミとShake the world
淘汰の先にある未来へ

来ました。「淘汰の先にある未来へ」。

これは、きっと同期や後輩に先を越されてきた事実、つまり「淘汰されてきた」過去を指しているのだと感じました。

これまでの自分たちの境遇を「淘汰されてきた」と表現するのは、悲しくもあり、シニカルさも感じますが、その先の未来は自分たちが掴むという意志と共に、この個所を一生懸命歌う姿に胸を撃たれました。

 

Hey ! Two steps forward, One step back (Day by Day by Day)
Three steps forward, Two steps back (So It’s up to you)

二歩進んで一歩下がる、三歩進んで二歩下がる…。
この個所も、「淘汰されてきた」時期を描いたものだと考えます。

ですので、通常「Day by Day」(=一日一日)と表現される言葉が、もう一つ加わって「Day by Day by Day」とされているところにも、どれだけ長く待ったかというシニカルさが込められていそうです。

さらに、it's up to you(=あなた次第)の個所ですが、ここでの「you」も「Hey you… Let me go!!」と同じく、ジャニーズ事務所を指しているかも?と思いました。

三歩進んで二歩下がっているように感じるくらい、デビューまで時間がかかってしまったのは、up to you、ジャニーズ事務所のせいですよ…という…。

 

Dancing Dynamite Oh Dynamite
Hey you… Let me go!!
Hey you… Let me go!!

その直後に、ぶり返す「Hey you… Let me go!!」。やはり、ここの「You」もジャニーズ事務所説。

 

限りあるGlorious… 誰に微笑むVenus…
誰かのせいにしてちゃ No No No way

Glorious=栄光は、メジャーデビューできる枠を指しているのでしょうか。その狭き門を通過できる=女神が微笑むのは誰か?という、事務所内の熾烈な争いを指しているのでしょう。

誰かのせいにしてちゃNo way(=ありえない)。…ということは、up to you=事務所のせい説はここで崩れてしまったかもしれません。。。

 

MajesticなSoul
Drasticなエンドロール
欲しがるのは罪じゃない

Majestic(=壮大な)魂…大きな野望のようなものでしょうか。

Drastic(=思い切った)エンドロールは、これまでの長い下積みからの、いわば逆転劇のようなものかと。「欲しがるのは罪じゃない」というのは、「活躍したい、成功したい」という想いには素直でいい、と自分たちに言い聞かせているのかもしれません。

 

避けられない孤独のTear drops
弱さの先にある強さ

ここでいう孤独は、同期や後輩たちに先を越され、取り残されている感じを描写しているものと思われます。

弱さの先の強さ、とは、きつかった時期も糧にしているということでしょう。

1番の「Strong will never get ill」にもある通り、「強さ」はSnow Manにとってのキーワードの1つなのかもしれません。

 

Keep standing in the light
My art has no rule
キミと 描く場所へ

Keep standing in the light…一旦メジャーに出たら、ずっと活躍し続けるぞ、という気持ちの表れで、1番の「Keep running to new world」とリンクします。

そして、キミ=ファンの皆と共に歩んでいくということを約束してくれているようです。

 

Just follow me
Endless Road
Never look back… Yeah

辛かった過去は振り返らず、キミ=ファンへ向けて、Engless Road=終わりのない輝く未来への誘い。
Take you higher=高みに連れていくという冒頭の歌詞にも繋がるメッセージを発してくれています。

 

願い続けたDay or night Dramaticなスペクタクル
頂上(テッペン)見せてあげよう Here we are

「願い続けたDay or night」も、メジャーデビューを夢見てずっと頑張ってきた日々のことでしょう。

そして、その逆転劇はまさにドラマティック。今の活躍ぶりを見ると、この歌詞の通りです。

長い葛藤の時代を経て、迷いがなくなり、本物の強さを手に入れたSnow Manは、自分たちが高みを目指したいだけでなく、キミ=ファンにもテッペンからの絶景を見せてあげたいという、感謝の表われのように感じます。

この箇所で、また涙がグッと込み上げてくるのです。

 

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以上、長々とかなり勝手な解釈でした。

ちなみに、Snow Manは、2020年にデビューするも同年の紅白歌合戦はメンバーの新型コロナ感染により出場を逃しました。

そして、2021年。

私は、楽曲「HELLO HELLO」で出場し、バナナマン日村さん直伝の深澤さんによる「棒立ち」炸裂を期待していたのですが、選ばれた曲は「D.D.」でした。

しかし、念願叶っての紅白歌合戦。この歌詞に込められた意味を考えれば、最初の出場は「D.D.」以外の選択肢はなかったも当然です。

歌い切った後のメンバーの清々しい表情が印象的でしたが、その意味がようやく正しく理解できた気がしました。

 


www.youtube.com

20220122 ランチタイムミュージシャン

昨年末に、2022年の抱負を述べましたが、音楽のミックスやマスタリングの基礎知識を深めていきたいと考えています。

そして年始早々、遂にLogic Proを手に入れました。まだ、Garagebandの延長的な機能しか使えていませんが、少しずつマスターしていく所存です。

 

また今年は、ずっと継続している音楽生活を、もう少し自身のアイデンティティとして深めていきます。

 

それに向け、職場の昼休みで音楽制作をしていることにちなみ、「ランチタイムミュージシャン」として情報発信を定期的に行う予定です。そうすることで、いわゆるDTMerの方々との横のつながりを構築する年にします。

 

また、これまで創ってきた音楽をもう少し広く聴いていただきたいと思い、順次Lyric Videoを制作してYouTubeにアップすることとしました。

まだ走り始めたばかりのチャンネルですが、ぜひ少しでもお立ち寄りいただけますと幸いです。

 

youtube.com

 

どうぞ、よろしくお願いします。

 

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20210519 スピッツと桃

最近、久しぶりにスピッツをよく聴いているのですが、自分が作成した十数曲のプレイリストの中で、何曲かの歌詞に共通する単語が耳に残りました。

それは、「桃」。

 

もしかしたら草野正宗さんが書く詞には桃が多く登場するのかもしれない…と思い、調べてみました。

せっかくなのでここでリリース順にご紹介したいと思います。

 

まず、一番懐かしい曲から。

の香りがして幸せ過ぎる窓から 投げ捨てたハイヒール

-グラスホッパー(1995,『ハチミツ』より)

 

グラスホッパー

グラスホッパー

  • provided courtesy of iTunes

ライブでも盛り上がるアップチューン。
スピッツの所属事務所名も「Grass Hopper」である(ロードアンドスカイから2001年に分社化)ことから、グラスホッパーという名前にも愛着があるのかもしれません。

 

続いての桃ソング。 

今 彗星 はかない闇の心に そっと火をつける弾丸 缶 みんな抱えて 宙を駆け下りる

-ほうき星(1996,『インディゴ地平線』より)

ほうき星

ほうき星

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アルバムを全体として独特の音色をもつ『インディゴ地平線』の中でも、特に異色な存在感を放つ(と個人的に感じる)ほうき星。

この曲は、スピッツ史上初めて、ベースの田村明浩さんが作曲を手掛けています。

 

続くアルバムでも桃ソング。

切ない気持ち 抱えて笑い出したのはおとぎの国も 色に染まる頃

-センチメンタル(1998,『フェイクファー』より)

センチメンタル

センチメンタル

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1998年リリースの『フェイクファー』。これは、私が初めて発売日当日に入手したスピッツのアルバムです。

序曲「エトランゼ」に続く、ギターのリフが印象的なこの作品は、アルバムの雰囲気を象徴する一曲といえるでしょう。

「忘れたふりの全てを捧げる 春の華」というフレーズを含め、圧倒的な歌詞のセンスが光ります。

 

桃ソングは、しばらくお休みして2005年に復活。

海鳥の声を背に 色の空を見る 何ひとつ残さずに 飛びたい

-甘ったれクリーチャー(2005,『スーベニア』より)

甘ったれクリーチャー

甘ったれクリーチャー

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バンドサウンドにしてEDMのような体が疼き出すグルーヴ感のある作品。

「甘えたい」というメッセージと、重厚な演奏のギャップが大好きな一曲です。

 

 

その次の桃ソングは、なんとタイトルから「桃」。

リリースから既に10年以上経過する本作ですが、本稿執筆時点で確認できる最新の桃ソングとなっています。

もしかしたら、桃への想いに区切りをつけたのかもしれません。(絶対そんなことはない)

切れた電球を今 取り替えれば明るくの唇 初めて色になる

-桃(2007,『さざなみCD』より)

桃

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この曲は、(私の思う)スピッツの伝家の宝刀である、Aメロ+サビのシンプルな構成。

透明感のあるサウンドと優しくも切なさを感じるメロディに、草野さんの声が絶妙にマッチして胸がキュンとします。

ギタリスト三輪テツヤさんのアルペジオも全開で、「これぞスピッツ」という作品ではないでしょうか。

 

 

本稿執筆時点で既に300曲を超える作品を世に送り出しているスピッツ

その中から、十数曲だけを抜粋したプレイリストの中で「桃」という言葉が多く見つかったので、大量の桃作品が見つかることを期待していたのですが、蓋を開けてみると見つかったのは以上5曲。

どうやら、偶然にも私が多くの桃作品を引き当てていただけだったようです。

20210102 紅白歌合戦

昨年末の紅白歌合戦氷川きよしさんの演出、出だしは白という「檻」に囚われていたんですね。

歌のうまさに気を取られてリアルタイムでそのメッセージに気づきませんでした。悔しい。

 

しかしこのご時世、男女で分ける歌合戦もそろそろ潮時かもしれません。

ただ、視聴者を楽しませるには対決という構図が適しているのも確か。

 

では、男女以外でどのような分け方があるでしょうか。

 

出身地での東西 or 南北歌合戦。

…これだと様々なエリアからの出身者で構成されるグループの配属決めが難しそうですね。

 

むしろ、その制約を活かして、ソロアーティスト VS 2人以上のグループとか。

…これでは、そこまで双方にライバル心が生まれなさそうです。

 

もういっそのこと、両組のリーダーが今年出演してほしいアーティストを揃えて、プレイリストとしてよかった方を決める、という方針でどうでしょう。

 

出演希望の対象がバッティングしたときは、ドラフト方式で決める。何なら、その様子も番組化してもいいかも。

 

 

何にせよ、時が流れていくにつれて、これまで続けてきた伝統行事もアップデートしていきたいですね。

音楽談義 #02 「バンド運営と企業運営」

これは、本ブログ管理人である邦秋と、シゲ氏(Real Hiphop Neo Japan)の楽しい会話を文字に起こしたいという邦秋の願いを形にしたものです。緩くも深そうな話をお楽しみください。

本稿は、以下対談(本編)のアフタートークです。 

kuniaki.hatenablog.com

 

邦秋(以下、邦): 歌と歌詞の一体感という点では、B’zの愛のバクダンにも注目したいな。当時、久しぶりに出たシングルがあのタイトルと曲調ですごく驚いたんだけど、「愛のバクダン もっとたくさん おっことしてくれ~」のメロディと語感の良さで、今ではライブでも大盛り上がりの曲だよ。

シゲ(以下、シ): カラオケで歌っても気持ちいいよね。B’zを知らない人に一番初めに紹介する曲ではない気がするけど(笑)ちなみに、「愛のバクダン」は、一般のバンドにもコピーしてもらえる歌っていうコンセプトで作られたんだって。

邦: 確かにB’zの中ではテクニックというよりもキャッチーさを全面に出した歌だもんね。

シ:B’zはなかなかコピーしてもらえていない」っていう自覚が本人たちにあったみたい。

その点、LUNA SEAはたくさんの人にコピーされているらしいよ。演奏が強烈過ぎるX JAPANのコピーを断念した人たちが、その後デビューしたLUNA SEAに飛びついたんだとか。その結果、各楽器のシグニチャーモデルはLUNA SEAのアイテムが一番売り上げてるみたいよ。

邦: なるほど。コピーのしやすさが、そういうセールスにも影響を及ぼすんだね。

シ: ところで、「良い歌詞」の定義が見えてきた今、コブクロ「桜」も納得がいくようになったの(笑)?

邦: あぁ…。以前、よくブログで、歌詞の意味がよくわからない旨を語ってしまった件ね(笑) 

kuniaki.hatenablog.com

 

この歌も、セールス的に成績を残していて、皆がカラオケで歌っている以上、多くの人にとっては歌詞が曲に馴染んでいる作品なんだな、と思えるようにはなったかな。ま、個人的には、そもそも別れソングで桜は使いたくないな、とは思ってるけど。

シ: あ、邦くんそういうところあるよね。王道を走りたがらないというか。以前も、「これからビジュアル系バンドを始めるなら、LとDから始まるバンド名は止めた方がいい」って言ってたし。

邦: 大きなお世話だよね(笑)

シ: そう考えるとビジュアル系バンド界における漢字名の「黒夢」って、デビュー当時はものすごく先鋭的だったんだろうね。

邦: 清春さんのマーケティング的発想だよね。

シ: マーケティングか。そう言われると、L’Arc~en~CielとかT.M.Revolutionとかもそういう思考が強い気がする。あとはDragon Ash。しなやかにイメージを変えていってるよね。

邦: 確かに。それぞれアーティスト自身と事務所のどちらかがマーケティング思考が強いんだろうけど、L’Arc~en~Cielのプロモーション活動は秀逸だよね。そして、マーケティング思考といえば、やっぱりゴールデンボンバーは外せないと思う。

シ: 鬼龍院翔さんで印象に残っているのは、「売れるために必要なのは清潔感」って明言していたことだね。THE BLUE HEARTSとかBLANKY JET CITYが若者の憧れの的だった時代もあるけど、今はそうじゃないんだよね、きっと。

邦: 売れたいなら、そういうところを見極めていけるかどうかだよね。恐らく、プロを目指すけど芽が出ないバンドとかは、過去の憧れを捨てきれない人が多いんだろうと思う(笑)

シ: 「清潔感の必要性」という点では、GLAYは当時の若手バンドの中でも、いち早くそれに気づいていたのかもしれないね。GLAYといえばスーツって感じがするじゃない? ポップスしか聴かなかった層にバンドという存在を身近にさせた功労者だと思うよ。

邦: 20万人ライブを開催できるくらい、広い層に受け入れられたってことだもんね。

シ: そう考えると、市場を見極めつつ「どう売れるか」「どう生き残っていくか」を模索するという点では、バンドも民間企業も同じだよね。

邦: そう!!!! そこでウチが個人的に最近注目しているのが、バンドロゴでさ。

シ: お、急にテンションが上がったね。

邦: 「固有のロゴを持っているバンド」についてよく考えてるのよ。例えば、ウチらの世代でいうと、頑ななのはX JAPANLUNA SEAB’zも、「LOVE PHANTOM」から現ロゴの原型が使われ始めて、その後「ギリギリchop」以降しばらく使用されてなかったけど、「BANZAI」で復活して以降は統一的なんだよね。

シ: L’Arc~en~Cielも初期の頃は統一的なロゴを使っていたなぁ。

邦: ビジュアル系の雰囲気推しの場合は、日本語で言う明朝体のような「セリフ体」のフォントが多いよね。

企業運営において、CI(コーポレートアイデンティティ)の中のVI(ビジュアルアイデンティティ)っていう考え方が合ってさ。

シ: ん、難しい話になりそうだね。

邦: 企業が自社の理念や特徴を社会に共有して、企業内外に統一したイメージをつくることで、より良い会社をつくろうとする企業戦略のことを「CI」、それに基づいて企業の象徴となるシンボルマークやロゴタイプといった視覚(ビジュアル)の統一を図る施策を「VI」っていう定義で間違いないと思うんだけど…

シ: なるほど。

邦: VIがしっかりしている企業は、あらゆる場面においてその企業のイメージを崩したくないから、シンボルマークとかロゴに関する使い方について、多くの制約を課したマニュアルを作ったりしてるのよ。色とか縦横比とか周囲の余白とか。その取り組みを地道に続けることで、消費者の間でもそのマークを見ただけで、企業の名前はもちろん、その企業に対する良い印象も付随して思い出す。

決まったロゴを使い続けているバンドについても、やっぱりロゴを見るだけで一定の印象を抱けるようになってるんじゃないかな。特に海外バンドだと色々と思い出すでしょ。

シ: KISS、AC/DCメタリカNIRVANA…全て言葉なんだけど、絵のようにこれを一瞬見るだけで色々とイメージが思い浮かぶね。そういうロゴを作るバンドとそうでないバンドの違いは何だろう?

邦: 単に、バンドメンバー本人や事務所側のブランド意識が高いかどうか、に尽きると思うんだよね。フェスのポスターで出演者のロゴがずらっと並ぶとバラエティの豊かさが伝わって楽しいビジュアルになるけど、その点では日本も若手~中堅はそういう面での意識が高くなっている気がするよ。

シ: UVERworldMAN WITH A MISSION、MY FIRST STORY…。確かにそうかもしれない。

それにしても、「良い歌詞」の話からここまで話が広がるとはね。

邦: シゲが「音楽は総合芸術」って言ったけど、そこに付随する価値観として、こういったデザイン戦略も関わってくるかもね。ぜひ、今度からはバンドを取り巻くデザイン事情にも注目してみてよ。

シ: いいね。もっと音楽を楽しめそうだわ。

音楽談義 #01 「良い歌詞の定義」3/3

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歌詞に意味はなくてもいい

シゲ(以下、シ): 俺、歌詞から人生を学んで生きた男だからさ、そのメッセージが重要ってずっと思ってたんだよ。その点で、「自分の書いている言葉に意味はない」って明言していた草野正宗さんの作る歌を今まであまり聴いてこなかったんだよね。

でも、スピッツの歌も曲と歌詞の一体感という点では確かに感じるから、今日の話を経て改めてちゃんと聴いてみようかな、と思ったよ。

邦秋(以下、邦): そういえばこの宿題を貰って、詩について少しウェブで調べてたら、谷川俊太郎さんのインタビュー記事を見つけたんだよ。かのレジェンドも、「詩はくだらないもの」って仰っててとても驚いたよ。その点では、詩も歌詞も根底は同じなのかもね。

eikaiwa.dmm.com

そして、意味がないことを前提としている中で、歌のために生まれた歌詞として、「歌との一体感」という観点はやはり重要になってくるんじゃないかな。

水曜日のカンパネラの「桃太郎」に出てくる「キ ヴィ ダーンッ キヴィキヴィ ダーンッ」なんて、先の3つの観点で行くと評価は低くなるんだろうけど、あの音程とリズムと言葉の響きでライブハウスが揺れるんだから、この歌詞は「良い歌詞」に当てはまると言ってもいいのかな、と。

シ: 「つけまつける」とか「Yeah! めっちゃホリディ」とかね。メッセージ性とは別の観点で、よく考えられたか詞なんだなぁ。…そう考えると、「悪い歌詞」っていうのはプロの世界では出づらいのかもね。

邦: 確かにね。ま、曲調と歌詞の雰囲気が合っていないな、とか、譜割りに違和感があるな、って個人的に感じる曲はあるけどね。恐らく、それは主観なんだろうけど。

例えば、その両方を満たしちゃうのは、L’Arc~en~Cielの「bravery」。あの曲は、もう少し違うテーマの歌詞を欲しがっていた気がするし、「何を知ってるっていうのさ」という譜割りも勿体ないなぁって思ってる。

シ: ぶっちゃけるね。

邦: 曲が呼んでいない言葉選びという点では、安室奈美恵さんの「Get myself back」もね。「サビでそっちに行くかぁ」とは思ったかな。生意気な素人だよね。ファンに怒られる。

シ: LUNA SEAの「THE BEYOND」って曲があってさ。それは、普通の歌もあるんだけど、SUGIZOさんのバイオリンによるインスト版もあるのよ。実は、そのインスト版を聴いて初めてこの曲のメロディが心に染みてさ。日本語の響きが重すぎるせいなのか、言葉に隠れちゃった魅力かな、と思うことがあったね。

邦: その曲を聴いたことがないからわからないけど、もしかしたら、それは曲が呼んだ歌詞じゃなかった可能性はあるよね。今回の評価軸で行くと、もっと再考の余地があったのかもしれない。

シ: 最近のLUNA SEAの歌詞はあまり好きじゃなくてね。文章じゃなくて断片的な言葉が多いのよ。

邦: あ、それは完全に主観だね(笑)。最近のLUNA SEAの歌詞が、メッセージ性を欲しがるシゲの好みにフィットしていないだけで、それは今の彼らの楽曲に必要な断片性かもしれないじゃない?

シ: 確かにそうだ(笑)。客観と主観を切り分けないとね。

ところで、桜井和寿さん(Mr. Children)は、譜割りの面では弱いって自認しているみたいよ。一時期から、譜割りよりも言葉選びを優先するようになったんだって。

邦: 桜井さんの譜割りは音に対して言葉を詰め込むイメージがあるけど、それはそれで全部かっこよさが成立している気がするけどなぁ。どちらかというと、音に対して少ない言葉を無理して伸ばす歌詞が苦手かな。譜割り潔癖症のウチとしては(笑)「強がって」を「つよがぁ~ぁ~って~」って歌うとかさ。今のは具体例が思い浮かばずに適当に作ったけど(笑)

シ: なるほどね。俺は、意味のないラララも嫌だね。

邦: ラララ潔癖症がここに居た!

シ: L’Arc~en~Cielsnow dropの「ララルララ」は素晴らしいよ。あれは、意味のある「ララルララ」。

邦: 深い分析だな。

シ: あの「ララルララ」はね、雪が降っていることを表してるんだよ。「祝福されたように」 → 「ララルララ」 → 「あなたはまるで白いベールを被ったようだね」でしょ? 「ララルララ」で雪が降ったから、白いベールを被ったようになる。必要なララルララだね。

邦: 歌詞の読み込み大会があれば、シゲは優勝だね。

 

音楽は総合芸術

シ: いやー、それにしても良い歌詞の定義が見つかってとてもスッキリした気がするよ。

邦: ウチもそう思ってたんだよ。でも、実はこの光の先に闇があってね…。

シ: え?

邦: これまで話してきたのは、あくまでウチが曲先で歌詞を書く人だから、その前提に立った話なのよ。だから、詞先の人はもっと自由に歌詞を書けるわけで、その点で「歌詞の評価」っていう話をすると、実は先の定義が崩れてきちゃうのよね。

シ: それでも、曲が歌詞に寄り添うこともあれば、歌詞が曲に寄り添うこともあるから、それは別にいいんじゃないの?

邦: 詞先の場合、曲と歌詞との一体感があるかどうかの評価って、むしろ良い作曲かどうかという視点になるのよね。その点では、歌を考慮せずに書かれた詞先の歌詞は、実はシゲが冒頭に上げた、哲学・切り口や表現力の面で評価されていいとも思ってるんだ。

シ: なるほど…。詞先の代表格としては槇原敬之さんとかね。でも、全部の曲に対して曲先か詞先かって明記されていない分、この話は難しくなっちゃうね。

邦: そうそう。だから、詞先の作品は「歌詩」、曲先の作品は「歌詞」のように、評価の土俵を分けてくれると嬉しいな、って思う。曲先派で、常に曲が呼んでいる言葉を探す旅に出ているウチとしてはね。

シ: 理解はできるけど、それは難しい話だな(笑)

邦: さらに、詩の歴史は文字が無かった頃に遡るみたいで、その頃は旋律に乗せて詩が詠い継がれてきたらしいのよ。すると、序盤で行った「詩」と「歌」の切り分けすら、崩れちゃうという(笑)

シ: おやおや。

邦: …そうなんだけど、ま、歴史は移り変わっていくし、現代の解釈として、先に述べた評価軸を信じていいんじゃないかな、と思ってるよ。

シ: 割り切りは必要だね(笑)

それにしても、良い曲っていうのは、良いメロディ・良い言葉・良いアレンジ・良い演奏・良い声・良い歌い方…色んな要素が合わさって初めて生まれるんだね。もはや一つの総合芸術だ。

邦: 素敵な結論に至ったじゃない。何だか、今回の宿題と考えを通じて少し大人になった気がするよ(笑)

どうもありがとう。